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モジュール2のピニオン20歯とラックが噛み合うラック&ピニオン機構の俯瞰画像

ラック&ピニオン機構とは?回転を直線運動に変える設計入門

ラックアンドピニオンは、回転運動を直線運動に変換する最も基本的な歯車機構です。回転する小歯車(ピニオン)と、平らな棒状の歯をもつ歯車(ラック)をかみ合わせることで、ピニオンの回転がラックの直進運動に変わります。CNC工作機械の送り機構、自動車のステアリング、昇降ステージ、3Dプリンタの軸駆動など、回転運動を直線運動に変換したいさまざまな場面で利用されています。meta-maticでは、ピニオンを 平歯車ジェネレーター、ラックを ラックギアジェネレーター で生成し、2つを組み合わせるだけでこの機構を設計できます。本ガイドでは、ラック&ピニオンの原理、移動量の計算方法、ピニオンとラックの設計、STEPファイルの生成手順までを解説します。

ラック&ピニオンとは

ラック&ピニオンは、ピニオン(小さな平歯車)ラック(直線状の歯車)という2つの部品で構成されます。ラックは、平歯車のピッチ円(基準円)半径を無限大にしたと考えられる直線状の歯車です。半径が無限大になるとインボリュート曲線は直線に近づくため、ラックの歯面は直線(台形歯形)になり、この直線歯面がピニオンのインボリュート歯形と正しくかみ合います。ピニオンが回転すると、かみ合った歯がラックを押し、ラックがまっすぐに移動します。逆に、ラックを動かせばピニオンが回転するので、回転⇄直進の双方向の変換ができます。

図1: ピニオンの回転がラックの直線運動に変換される(ピニオン20歯・モジュール2)

meta-maticのピニオン(平歯車)とラックは、どちらも圧力角20°・歯末のたけ 1.0m・歯元のたけ 1.25m・バックラッシュ 0 を固定パラメータとして共有しています。同じモジュールで生成すれば、設計上は正しくかみ合う歯形になります。

平歯車生成
平歯車生成SPUR GEARhttps://meta-matic.com/3d/spur-gear/
ラックギア生成
ラックギア生成RACK GEARhttps://meta-matic.com/3d/rack-gear/
参考実装としての位置づけ
本ツールは標準的な歯形寸法をもとに生成しています。圧力角やバックラッシュは固定値のため、実際に動かす機構では、必ずCAD上や試作で噛み合いと遊び(バックラッシュ)を確認してください。

メリットとデメリット

ボールねじやベルト駆動などの代表的な直線運動機構を比較すると、ラック&ピニオンには長所・短所がそれぞれあります。機構選定の参考にしてください。

主なメリット

主なデメリット

回転と直線運動の関係

ラック&ピニオンの最大の特徴は、ピニオンの回転量とラックの移動量が比例することです。ピニオンが1回転すると、ラックはピニオンのピッチ円円周に相当する距離だけ移動します。ピッチ円直径を d、モジュールを m、ピニオンの歯数を z とすると、ピッチ円直径は d = m × z なので、ピニオン1回転あたりの移動量は次の式で求められます。

ピニオン1回転あたりの移動量 = π × d = π × m × z

例えば、モジュール2・歯数20のピニオンなら、1回転で π × 2 × 20 ≒ 125.7mm 移動します。ピニオンを θ 度だけ回したときの移動量は、(θ ÷ 360) × π × m × z で計算できます。この比例関係のおかげで、ステッピングモーターと組み合わせれば、回転角から移動距離を正確に制御することができます。

ピニオンの回転移動量の式m=2・z=20 の例
1回転(360°)π × m × z125.7 mm
半回転(180°)π × m × z ÷ 262.8 mm
歯1枚分(360/z°)π × m6.28 mm
表1: ピニオン回転量とラック移動量の関係(モジュール2・歯数20)
ラックのピッチ
ラックの歯と歯の間隔(ピッチ)は p = π × m で、ピニオンが歯1枚分回るとラックも歯1枚分(π×m)進みます。ピニオンとラックのモジュールが同じなら、このピッチが一致するため正しくかみ合います。

ピニオンとラックの設計

ラック&ピニオンを設計するときは、ピニオンとラックのモジュールを必ず同じ値にそろえることが大前提です。モジュールが違うと歯のピッチが合わず、まったくかみ合いません。モジュールをそろえたうえで、ピニオンの歯数とラックの長さを用途に合わせて選定します。

ピニオン20歯とラックの噛み合いを真上から見た配置図
図2: ピニオンのピッチ円がラックのピッチラインに接するように配置する
ピニオン歯数の選び方
ピニオン歯数を増やすと1回転あたりの移動量が増え、移動は速くなります。一方でラックを押す力(推力)は F = T ÷ r(T: モータートルク、r: ピッチ円半径)で決まるため、同じモータートルクならピッチ円半径が大きいほど推力は小さくなります。つまり同じモータートルクで比べると、歯数を減らす(ピッチ円半径を小さくする)ほど移動は遅くなりますが、推力は大きくなります。速度と力のバランスで歯数を選びます。

主要寸法と移動量の計算

ラック&ピニオンの主要寸法は、モジュール m とピニオン歯数 z から計算できます。組み立て時の位置決めに必要な寸法は次のとおりです。

名称記号・式m=2・z=20 の例
ピニオンピッチ円直径d = m × z40.00 mm
ピニオン歯先円直径Da = m × (z + 2)44.00 mm
ピニオン1回転の移動量π × m × z125.7 mm
ラックのピッチp = π × m6.28 mm
表2: ラック&ピニオンの主要寸法(圧力角20°・標準歯形)

組み立てで最も重要なのは、ピニオンの軸中心とラックのピッチラインの距離です。ピニオンのピッチ円がラックのピッチライン(歯先から歯末のたけ m だけ下がった線)にちょうど接するように、ピニオン軸を ピッチ半径 = m × z ÷ 2(例: m=2・z=20 なら 20mm)だけ離して配置します。この距離が近すぎると歯どうしが食い込み、遠すぎると遊びが大きくなって正しく動作しません。

ステッピングモーターでの駆動例

ラック&ピニオンは回転角と移動量が比例するため、ステッピングモーターと組み合わせると移動距離をステップ単位で正確に制御できます。CNCやガントリー、XYステージなどの自作でよく使われる構成です。1ステップあたりの移動量(分解能)は次の式で求まります。

1ステップの移動量 = π × m × z ÷ (1回転あたりのステップ数)

例えば、一般的な NEMA17 ステッピングモーター(200ステップ/回転) に、モジュール1・歯数20のピニオンを取り付けた場合の分解能は π × 1 × 20 ÷ 200 ≒ 0.314mm/ステップ です。さらに 1/16 マイクロステップ駆動を使えば 0.314 ÷ 16 ≒ 0.02mm まで細かくできます。モーターのステップ数とピニオン寸法から分解能を求めるには steps/mm計算ツール が便利です。

分解能と速度のトレードオフ
モジュールやピニオン歯数を小さくすると1ステップの移動量が小さくなり分解能は上がりますが、同じ回転数での移動速度は遅くなります。必要な精度と速度のバランスで、モジュールと歯数を選びます。

STEPファイルの生成手順

meta-maticでは、ピニオンとラックをそれぞれのジェネレーターで生成し、CAD上で組み合わせます。どちらもブラウザ上でパラメータを入力するだけでSTEPファイルをダウンロードできます。

  1. モジュールを決める

    ピニオンとラックで共通のモジュールを決めます。必要な推力や精度、相手部品との兼ね合いから選びます。
  2. ピニオンを生成する

    平歯車ジェネレーターで、決めたモジュール・ピニオン歯数・軸穴径・歯幅を入力してSTEPファイルを生成します。
  3. ラックを生成する

    ラックギアジェネレーターで、同じモジュール・必要な歯数(長さ)・高さ・幅を入力してSTEPファイルを生成します。
  4. CADで組み立てる

    Fusion 360 / SolidWorks / FreeCAD などで両ファイルを開き、ピニオン軸とラックのピッチラインの距離を ピッチ半径m×z÷2)に合わせて配置します。
  5. 噛み合いを確認する

    ピニオンを回転させて、ラックが滑らかに直進するか、歯の食い込みや過大な遊びがないかをアセンブリ上で検証します。
平歯車生成
平歯車生成SPUR GEARhttps://meta-matic.com/3d/spur-gear/
ラックギア生成
ラックギア生成RACK GEARhttps://meta-matic.com/3d/rack-gear/

3Dプリント・組み立ての注意点

ラック&ピニオンは3Dプリントでも製作できますが、直線運動の滑らかさは歯面の精度とラックの真っすぐさに左右されます。次の点に注意すると実用的な機構になります。

ラック端での歯飛び・噛み合い外れ
ラックの端までピニオンが来ると、噛み合う歯が減って歯飛びや噛み合い外れが起きやすくなります。実際に使うストロークよりもラックを長めに設計し、両端に余裕の歯を残してください。

よくある質問

Qピニオンとラックのモジュールは同じでないとダメですか?
はい、必ず同じモジュールにそろえる必要があります。モジュールは歯の大きさとピッチを決める値で、モジュールが異なるとラックの歯のピッチとピニオンの歯のピッチが合わず、かみ合いません。
Qラックはどのくらいの長さにすればよいですか?
必要な移動距離(ストローク)に、ピニオンが両端でも噛み合うための余裕を加えた長さにします。ラックの歯数は「必要な長さ ÷ ピッチ(π×m)」を目安に決め、端に数枚の余裕を持たせると安全です。
Qラック&ピニオンはどんな用途に使われますか?
CNC工作機械やレーザー加工機の軸送り、自動車のステアリング、昇降ステージ、ゲートの開閉など、回転を正確な直線運動に変えたい場面で広く使われています。
Qピニオンの歯数に下限はありますか?
あります。圧力角20°の標準歯形では、ピニオンの歯数が17枚を下回るとアンダーカットで歯元が弱くなるため、本ジェネレーターは最小17枚としています。
Qどのくらいの位置決め精度が出せますか?
精度はモーターのステップ数・歯面精度・バックラッシュで決まります。ピニオン1回転で π×m×z 移動するので、ステップ数で割れば理論分解能が分かります。実際にはバックラッシュや歯面の誤差が加わるため、試作で確認してください。

関連リソース

ラック&ピニオンの設計に役立つジェネレーターや、関連する解説記事・計算ツールをまとめました。用途に応じて使い分けてください。